医学部整形外科学領域 内田 研造 准教授らの研究グループが発表した論文が、欧州脊椎外科学会誌の2013年グラマー基礎医学賞を受賞しました。この選考は、ドイツ、スウェーデン、スイス、アメリカの委員からなる欧州脊椎外科学会基礎医学部門アワード選考委員会が行っており、世界でも権威ある賞の一つとされています。
この賞は、欧州脊椎外科学会 (EuroSpine) の機関誌である欧州脊椎外科学会誌 (European Spine Journal)に昨年1年間に発表された基礎医学に関する論文の中から、最優秀賞として選出されるもので、この論文は2012年3月に掲載されました。
厚生労働省の難病に指定されている後縦靭帯骨化症などが原因で起こる頚髄症では、脊髄が圧迫されると知覚障害や運動障害等の神経障害が引き起こされます。これらの疾患は、高齢化社会を迎えている現在の日本で増加している疾患であり、麻痺が進行すると手術をしても完治は難しい病態です。
これまで内田准教授らは、馬場久敏教授を中心に、過去15年に亘り、脊髄が損傷していく病態プロセスを細胞生物学、分子生物学的な視点から多数の英語論文にて世界に発表してきました。 今回の論文では、脊髄が圧迫されると脊髄神経細胞やグリア系細胞がアポトーシスと呼ばれるプログラム細胞死というプロセスで脱落し、神経障害をますます重篤なものにするというメカニズムの一部分を世界に先駆けて、細胞生物学的に明らかにしました。具体的には、頚髄症の悪化する病態が、脊髄神経細胞やグリア系細胞のプログラム細胞死であることを証明する原因遺伝子を3種類特定しました。このことから、薬剤投与によって、原因遺伝子を抑制すれば、脊髄麻痺を軽快させることが可能であることを示唆し、さらに、脊髄の再生医学研究に特定の方向性を示したことが高く評価されました。
内田准教授は、10月3日から英国?リバプールで行われた欧州脊椎外科学会 「EuroSpine 2013」で、表彰を受け、研究論文および関連研究の概要について受賞講演を行いました。
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